ドローン利用の具体的方策を米国と比較する研究

要旨

今、世界中において、小型無人航空機(以下ドローン)の活用が注目を集めている。普及のきっかけとしては、主に大容量リチウムイオンバッテリーの開発を嚆矢とする技術革新が挙げられるが、飛行のための制度構築も無視できない議論である。
しかしながら、2021年の現時点においては、ドローンは日本で十分に活用されていないのが現状である。果たして、その要因はどこにあるのであろうか。
一つは法的な問題である。ドローンの飛行は、既存の飛行機やヘリコプターと同じく、航空法並びにそれに関する法令によって規制されるが、その飛行範囲が強く限定されている。たとえば、人の頭上は飛行が禁止されていたり、目視外の飛行が不可能であったりする点がそれである。物流に従事させる以上、町中の飛行は想定されて然るべきであるし、プログラミングによって自律飛行するからこそ、ドローンは真価を発揮するのである。したがって、現在の制度は商業利用を前提にしていないと言わざるを得ない。
もう一つは、世論の理解不足である。たとえ上記の条件をクリアした前提で、ドローンの飛行許可を事業者が得たとしても、発着点となる土地の所有者がそれを許すかは別問題である。例えば、公園にある(ドローン飛行禁止)の立て看板等がその典型と言えよう。
ドローンの規制が強化された原因は、これを悪用する事件の多発に求められる。とは言っても、ドローンの有用性をなおざりにし、悪印象を引き摺ったままでは、社会発展の機会損失に繋がりかねない。
もちろん、政府や業界団体も手をこまねいてばかりではない。「小型無人機に係る観光整備に向けた官民協議会」は2017年に、『空の産業革命に向けたロードマップ2020』を制定した。これは平たく言えば、2022年以降のビジョンが盛り込まれた、ドローン活用のための計画案である。
そして、本計画を見れば、これまでドローン産業のための法整備を中心に、様々な検証が行われていたことが明らかであるし、ドローンの活用段階は徐々に進んでいることが理解できる。
本論では、飛行ライセンスの在り方を、現行の制度と比較して模索していくものとする。

PDF