超高齢社会においてアクティブシニアが都市で生き生きと暮らすための余暇の過ごし方に関する一考察  —大阪、ホノルル、台北の比較—

要旨

1.日本の少子高齢化は世界に例を見ない速さで進んでいる。そして大阪も同様の状況にある。年金問題や介護問題など、社会保障や福祉分野における高齢者の話題が連日ニュース等で取り上げられて久しくない。しかし一概に高齢者といっても、年齢や健康状態、生活状況は様々である。高齢者の個々のニーズは多様化し、とりわけバブルを経験した団塊の世代が高齢者といわれる時代となり、より洗練されたライフスタイルを望むようになってきた。福祉分野等における高齢者支援だけではもの足りなくなってきている。シニア向けビジネスも変わりつつある。平均寿命、健康寿命ともに延びてきた現在、今後の活力ある超高齢社会の実現には、知恵やノウハウを豊富に有する「アクティブシニア」が生き生きと暮らせる街づくりが不可欠である。そこで、アクティブシニアが気軽に楽しみながら回遊できる街の姿とはどのようなものかを模索し、それを社会全体で共有し実現していくことにより、さらに大阪が住み続けたい街として選ばれ、いっそう活性化していくのではないかと考え、その第一歩として、今後のシニアが求める「余暇の過ごし方」について考察する。

2.余暇社会学において有名なJ・デュマズディエの説を参考にしつつ、高齢者への余暇ニーズに関するインタビューやデータに基づき、現代の社会状況と照らし合わせて、自身の仮説を検証していく。また日本だけではなく、住みやすい海外都市として人気のホノルルや台北と大阪を比較して考察を進めることとし、実際に現地に赴き自身の体感とともに、生活者へのインタビュー等を行う。着眼としては、アクティブシニアの余暇の過ごし方として、夕暮れから21時頃までの時間帯で今以上に楽しむことを提起し、ナイトエンターテイメントの活用を軸として、昨今注目を浴びているナイトタイムエコノミー振興とともに考察する。また参考に夜間の健全なエンターテイメント推進のために実施された風営法改正について取り上げる。

3.大阪のこれまでのエンターテイメントを中心とした歴史と現在を踏まえ、「ホノルル」や「台北」の事例と比較して、新たな発展の可能性について考える。最後にこれまでの検証を踏まえ、アクティブシニアが都市で生き生きと暮らすための余暇の過ごし方として有効であると考えられるナイトエンターテイメントについてまとめる。現在大阪では、インバウンドによる観光客が増加し、2025年の大阪万博やIRの誘致を控え、より一層グローバル化が進み、グルメやショッピング、娯楽性のみならず文化・芸術の視点など、知的欲求も満たすことができるような、多岐にわたるエンターテイメントはシニアのニーズでもある。今後の超高齢社会において、アクティブシニアが快適に回遊できる街づくりを構築していくことが重要である。

PDF