従来型商店街から創造商店街へ-日本橋における実践と提言-

要旨

商店街の再生が叫ばれて久しいがなかなかモデルが無いのが現状である。また商店街はまちづくり三法改正以降、まちづくりの側面を求められている。衰退の激しい近隣型商店街だけでなく、今後の一つのモデルであるはずの専門商店街もそうした課題をかかえているといわれている。筆者のかかわる日本橋商店街では、専門店街としての大きな変化を経験しながら、いろいろなプロジェクトをおこなってきた。本論は、こうした日本橋の経験をもとに、創造都市を視野に入れながら、創造的機能をもった「創造商店街」こそ、これからの商店街・まちづくりの発展にもとめられるのではないかという問題提起を行うものである。日本橋商店街は、古書街→パーツ街→家電街→パソコン街と変遷し、現在はサブカルチャーのまちとなってきている。しかし、単なる「サブカルチャー」「おたく」のまちへという変化を受動的に受け入れるだけでなく、若者が注目しているというパワーをうまくとらえて、よりクリエイティブな、より高度なブランドを目指すことが重要と考えられる。日本橋には、組織として、商店街振興組合、協栄会、および、その両者で捉えきることのできない事業の受け皿としてのまち会社(日本橋まちづくり振興株式会社)がある。筆者は、主としてまち会社とともにいろいろなプロジェクトに携わってきた。日本橋では、ハード事業としてのアーケードによって、商店街の組織化がなされたあと、積極的に展開してきた3つのプロジェクトがある。これらの事例をくわしくみてみると、「電子工作教室」の例からは「学習」、「日本橋ストリートフェスタ」の例からは「参加型」、「CGアニメ村」の例からは「新産業創造」などの側面が指摘できる。このような事例を元に、今後の商店街のあり方として、「創造商店街モデル」が提案できると思われる。創造商店街とは、(1)「変化・進化の存在する街」(常に変化する街、停滞の無い活動して生きている街であることが重要である。さらにダイナミックな対応能力も有している)、(2)「参加機能のある街」(日本橋ストリートフェスタに見られるように、街の内外の人々が街をつくる。その力の源泉は、人々の趣味への関心である。趣味人が街を変えていく)、(3)「学習機能のある街」(工作教室・ロボット教室・アニメ教室と幾つかの学習型参加イベントをつくりあげてきた。ヒトを育てて、ヒトに育てられる街でもある)、(4)「産業がある街」(従来の流通だけではない、産業がある街であることも重要である。嘗てはラジオ・テレビの製作し部品調達の場でもあった。CGアニメ村の開村は、アニメ産業が日本橋から起こす助けになればと開村したものである)、(5)「消費と生産が共存・混在する街」(多様性を持つ街であることも重要である。さまざまな要素が組み合わされている複合体としての街でもある)などの側面をもった、常に成長する街のことである。このような方向は、外国との連携、アニメカップなどさらに発展を見せつつあるが、街としてはマンション化の問題など、手をこまねいていると危機もありうる。こうしたこともふまえて、観光地としての可能性などを展望する。
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