コミュニティソーシャルワークの方法に関する一考察 - 知的障害者の地域生活支援の実践をとおして-

要旨

本論は、障害者が地域で包摂され生活していくための活動を、まさに コミュニティソーシャルワークとして実践していると思われる事例を紹介して、コミ ュニティソーシャルワークの理念と実践方法について検討するものである。最初に、 コミュニティソーシャルワークの概念の歴史的・実践的背景に言及しつつ、障害者の 地域生活支援の現状とコミュニティソーシャルワークの関係の問題点を析出した。そ して、知的障害者の地域生活支援を行っている「わっはの家」(神戸市東灘区)の活 動を調査対象にし、筆者が所属する「特定非営利活動法人あとからゆっくり」の活動 経験を踏まえながらコミュニティソーシャルワークの視点で「わっはの家」の活動を 評価した。筆者は、「わっはの家」の活動の事例研究から、これまでの障害者個別支 援の方法論とは異にして、個人の発達に必要なセルフエンハンスメント(自己発揚 感)をもたらす取り組みと、それらを伴った形での地域社会との交流という課題の社 会化に繋がる機能を見出した。コミュニティソーシャルワークとして有効な活動の方 法は、現在行われているさまざまな支援活動の中から、主体的活動を動機づける被援 助者の発揚感の育成をもたらすプログラムおよび他者との関係づくりの細やかな現状 分析から生まれるものであることを示唆した。そして、このような活動を創出あるい は支援していくことが、コミュニティソーシャルワークという言葉で含意されようと していることの本質だと論じた。事例の考察を経て、コミュニティソーシャルワーク の実証研究に有効な評価観点をいくつか提示した。①地域における障害者と地域住民 との交流機能をもつ場や空間が設置されていること、②上記のような場や空間におい て、障害者と地域住民の「つながり」を創出しえるような共体験をもたらす「仕掛 け」が見出されること、③障害者のエンハンスメントやエンカレッジが関係の中で生 じていること、などである。

Title:A Discussion on the method of community social work -Through some supportive practices in their community-life of ones with intellectual disabilities-

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